エルフの日々

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連携ケーススタディ5【障害悪化ハイリスク支援】

JUGEMテーマ:介護

 【障害悪化ハイリスク支援】・・・医学的管理と生活再構築が混在している場合


ケース1
 
70歳男性。重度の心疾患及び合併した脳梗塞による四肢麻痺。要介護5.
ベット上生活。胃ろうを中心とした栄養摂取、一部経口摂取できるものもあり。
地域保健師から相談。本人及び家族から居間で過ごしたい旨の希望あり。
約1年間ベット上生活である。往診している主治医もリスクを考慮して現状維持の指示であった。
ベット上起居は全介助。車椅子に座った経験がない。
移動は入院等の時にストレッチャーが使われていた。・・・さて・・
 運動器や循環器のリハビリテーションでも廃用性症候群に対するリハビリテーションでも、その目的は「こちら側」の理屈からは幾らでも思考できる。しかし・・
この場合リスクを考慮し且つ生活の中で改善点を見出すには「こちら側」の理屈は無用に思えた。
主治医及び保健師そしてケアマネジャーと綿密に打ち合わせし、ご本人とご家族と更に相談をした。
生活の改善点は、車椅子使用が可能になる事が最も意味があるように思えた。
離床すること。そのメリットは医学的にも又介護場面に於いても大きな意味を持つ。
主治医と入念なリスク管理を打ち合わせ。訪問看護を導入し、その中でリハを実施。
座位を確保するための身体的な機能改善に取り組んだ。
当初ギャッジアップすら困難な状態から、後に支えて30分程度座っていられるだけのコンディションとなる。勿論血圧計とモニターと睨めっこの結果である。
並行して、看護師、ヘルパーそして誰よりもご家族が車椅子に移乗させるだけの条件を整えた。車椅子はリスクを考慮しリクライニングを選択し、併せてシーティングを徹底した。(http://www.team-forest.net/o_manual/?p=71
この間、訪問看護では全身状態の改善や呼吸訓練等も実施。看護師とリハが主治医の指示の基に完全に分業体制で臨んだ。
約3ヵ月。勿論ご家族やご本人に意欲があったから可能だったのだが・・リクライニング車椅子にご家族が移乗させて、居間で約2時間程度過ごせるまでに改善した。
この時点で、既に看護師とご家族は拘縮予防のための簡単なメンテナンスを習得していたため、一旦リハは終了し看護師だけの訪問に切り替えた。
最終的には居間で過ごすだけでなく、ショートステイが利用できるまでになり、離床と車椅子座位の効果が生活の中に生かされた。


ケース2
 60歳女性。糖尿病。週3回の透析。
ケアマネジャーとご家族から相談。最近歩行が困難で自分で起き上がれなくなっている。
ご主人と2人暮らしで、日中ご主人は仕事で留守となっている。
麻痺等の障害は認めなかった。・・・と言うより・・すぐに原因が理解できた。
脱水若しくは低栄養状態。電解質異常?・・・リハどころではない。
透析のために通院しているのだが、医療機関からの指示を守っているにも関わらず、生活環境はかなり考察を要する状態だった。
7月だというのにコタツに横たわっている。汗をかなりかいている。
食事は自ら用意できないため、ご主人がいろいろ購入しているもので間に合わせている。
薬剤の管理やその他の医学的な管理が徹底していない。ただ・・病院内の指示を守っている。
すぐに主治医に連絡。訪問看護投入。リハは廃用性症候群対策を要するが、現状では全身状態のリカバリーに集中した。
サービス提供以前に一時検査入院実施。又医療機関の透析担当看護師に生活環境を見てもらい、その場でカンファレンスを実施した。
秋口には・・歩行訓練が可能となった。歩行器使用ではあったが、環境設定を並行し、何とか日常生活の自立度を向上させて行ける状況にまで改善した。
【かかりつけ支援】と基本的に異なるのは、その後も同様の管理や必要に応じた専門職の投入が必要な状況が続く事である。又医学的な管理は、在宅に留まらず医療機関と直線的に連結した対応が要求される。
・・・来年にはご主人が年金支給となるので2人で居られるみたい。よかった。


  医療的管理が徹底しないとすぐに自立度が低下したり、若しくは生命の危機に瀕するケースは実は稀ではない。介護保険だけの目線で在宅生活を考慮すると大変なリスクとなる。
又医療機関等が適宜対応して在宅サービスとリンクする事で、大きな効果を生む事が可能である。医療と介護場面(生活場面)が断絶した状態では、何ら対応策は生まれない。
在宅でのサービス提供では、リハは道具に徹する事が重要で、目的をはっきりと認識した上でその役割を果たす事が肝要である。
状態がハイリスクであれば尚更必要に応じた専門職の投入が望ましく、ケアマネジャーだけではなく関わる総ての職種がお互いに連携しないとサービスの効果を生まれにくい。
医療機関の外来リハを通所リハに切り替える事が、医療と介護の連結ではない。
寧ろお互いの役割を明確にし、専門職がその持てる能力を発揮しあって、初めて医療と介護場面が結ばれるように思われる。
 
 最近・・金銭的な理由で医療機関から遠ざかっているご家庭が散見される。
どんなに在宅サービスを充足しようとも、どんなにご家族が頑張っても、ハイリスクの状態を回避できずに、ただただ我慢している状況。
・・・ケアマネジャーさんや保健師さんから相談を受ける度に心が痛くなる。
私達の社会は、医療と介護が断絶すよりももっと大きな問題を内在し始めているのではないだろうか? 


【進行疾患支援】につづく・・

参考
https://ssl.miwapubl.com/products/detail/933
http://www.team-forest.net/g1/images/20.pdf

2009.11.20 Friday 01:43 | comments(2) | trackbacks(0) | 

連携ケーススタディ4【かかりつけ支援】

JUGEMテーマ:介護

 【かかりつけ支援】・・・・生活を保障するためのメンテナンス・処置・相談など


ケース1
 75歳女性。大腿骨頚部骨折。退院後、退院時移行支援及び運動器向上支援で約3ヵ月訪問リハ実施。日常生活はほぼ自立に達する。通常この後は必要に応じて通所サービス移行若しくは介護保険対象から脱するケースである。
変形性膝関節症を合併していたため、元の生活水準で活動しようとすると、腰部や下肢に疼痛が出現し、そのため恒常的にメンテナンスを要する状態にあった。
又、ご主人が寝たきりの状態であったために介護で外出が制限され、外来受診や通所系サービス実施が困難な状態であった。
主に腰部・下肢メンテナンス実施。靴やサポーター、杖などの相談にのりながらサービス提供を続けた。
約1年間、理学療法士が訪問実施。当初の退院時移行支援時は週2回の訪問。運動器支援からかかりつけ支援の初期は週1回、かかりつけ支援移行後は、徐々に訪問の回数を減らし、最終的には隔週のメンテナンスで十分な状態となった。
この頃、寝たきりであったご主人が亡くなり、外出の制限がなくなったため、訪問を終了し、理学療法士在籍の通所サービスに移行した。
現在、通所サービスも卒業間近で、次回介護保険認定時には自立判定となる見通しである。現在、ボランティア活動参加を心待ちにしている。


ケース2
  35歳男性。脊髄損傷。退院時までに十分なリハが実施され、車椅子移動ながら日常生活は自立域であった。相談訪問時に外出と職場復帰のための排泄に関するニーズがあった。排尿は、定時の自己導尿であったが、どうしても不安ありとのこと。主治医と相談の上、間欠式バルンカテーテル(http://www.team-forest.net/h3-1/barun.html)にて対処する 。
訪問は当初週1回の看護師訪問にて、バルンに関する練習や管理処置を実施。その後主治医指示により、月数回の看護訪問で十分対応可能となった。
排泄に関する対策や処置は、実は相談や簡単な処置で済む場合が多いが、日常生活及び社会生活に於いては大変重要な位置を占める。こういったかかりつけの支援は訪問看護ならではの大きな役割となる。


 生活に密着したサービス提供であるため、様々な理由で適宜相談や処置を要するニーズがある。サービス提供は比較的長期になるが、運動器向上支援とはまた別な意味でカテゴリー化すべきである。問題が解決されれば、当然次のサービスに移行する事になる。
こういったきめの細かい生活保障と、専門職が関与する機会が、日常生活や社会生活を保障する事になる。多職種が連携し且つ医療機関よりも敷居が低い訪問看護ステーションが担う役割は大きい。

 かかりつけ支援は、期間を設定し一定の効果を期待する移行支援や運動器向上支援とは違った形で評価する事が肝要である。
訪問系サービスがエビデンスを出しにくい理由の一つであるが、個々の事業所若しくは個々の専門職の問題点の捉え方が標準化されていないために、気がつかれずそのまま問題が放置されているケースが意外に多い事を知るべきである。
日常生活に留まらず、社会生活を考慮したサービス提供手法をもっと開発し、実践研究していく事が今後望まれる。

障害悪化ハイリスク支援につづく

参考
https://ssl.miwapubl.com/products/detail/933
http://www.team-forest.net/g1/images/20.pdf

2009.11.05 Thursday 00:41 | comments(0) | trackbacks(0) | 
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