エルフの日々

誰にも「約束」された場所があり・・そして誰もがそこを目指して一生懸命歩いてる
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春なのに

JUGEMテーマ:介護

 春なのに

   東京出張の折、上野駅で奇妙な光景を見た。
 浅草口の交番の前。時間はもう午前零時に近い時間である。
 ダンボールのシェルターが所狭しと並んでいる。ホームレスの臨時の家なのだろう。
 交番の前というのが気になった。本来なら避けていいはずの場所のように思えた。
 立ち番の警察官がまるで保護見張りしているかの光景に滑稽さと皮肉を感じた。
・・・・・・
  恋人同士だろうか。若い二人が腕を組んで歩いていた。
 違和感は彼ではなく彼女に感じた。街中をジャージ姿であった。汚れていた。
 厚化粧と派手なサンダルと余りにミスマッチだった。幸せそうな二人。でも大きな荷物
 を抱え、腕組む二人がどうしても気になったのは、果たしてジャージ姿だったからなのだろうか。
・・・・・・・
  賃貸アパートで生計を立てている老夫婦。
 最近アパートの借り手が居ないと嘆くことしばし。
 近所に立派なマンションが出来、家具つきのマンスリーマンションが立ち並ぶ。
 寮代わりにまとめて借りてくれていた会社の契約も切られたらしい。
 管理を任せている不動産屋からは改築を勧められている。でも資金なんかないんだよ。
 どうしたらいい?時代の変遷に置いていかれたその建物だけが残っている。
 まだローン残っているんだよ。
・・・・・・・
  90歳のお母さんを抱えた女性。
 パート辞めさせられたみたい。泣いていた。今までもぎりぎりだったのに。
 紙オムツ買えなくて、仕方なく布オムツにしていた。床ずれって言われて無理して買っていた。
 介護保険のお金払えない。訪問の看護師が無責任に受診を勧める。
 ちょっと待ってよ。だって払えない。お母さん受診させたくても払えない。
 入院って言われるのがもっと怖い。
 でもお母さんはコタツにあたりながら、それでも彼女の帰宅を待っている。
・・・・・・・・
  この雨で桜の華は終わり、藤の華咲く。春なのに。
 伸びやかな風が吹き、陽光に照射される。冬の鬱陶しさを昇華するようにそんな季節。  やり切れない息苦しさと、まるで泥炭地を歩くが如くの徒労感。苛まれる空気は何が起  因なのか?
 トンネルの向こうに灯火は見えるか。見えるなら僅かづつでも進みたい。
 若しくは、自分自身が灯火になれないものだろうか。
 例えそれが一隅を照らすに過ぎなくても。
 春なのに。 

2009.04.21 Tuesday 23:03 | comments(0) | trackbacks(0) | 
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