エルフの日々

誰にも「約束」された場所があり・・そして誰もがそこを目指して一生懸命歩いてる
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二人の夏

二人の夏 〜私たちは何をしなければならないのか1〜

 

 

晩夏の浜辺で老夫婦が海を見ていたんだ。

 

ご主人は鼻にチュウブを入れていた。 それは、常に彼が酸素を必要としている証でね。

多分、年来の不摂生と肺の老化が原因の病なんだ。 酸素はリュックに入れて、そこから相当の量が彼の肺に強制的に入っていく。

 

滅多に外出なんかできないだろうね。 話しかけるとチュウブを鼻からとって隠してしまった。

プライドの高い方なのだろう。 でも、5分と持たない。 唇がすぐ紫になって、肩で息を始めた。

 

でも奥さんは何も言わない。 よく知っているんだよね、彼を。

 

小さな軽自動車のバックシートには、バスケットと古めかしい釣り竿が置いてあった。

運転席側のシートが極端に前にあったから、彼女が運転して来たのかな。

 

二人で家にばかり居るから、二人とも海が好きだから。 そう。多分二人で出かけようって話になったみたいでね。

二人とも笑っていた。 明日若しくは今夜、彼の呼吸は止まるかもしれないけれど。

 

二人とも笑っていたんだ。 幾年月二人で過ごして来たのか知らない。

けれど、晩夏の海で笑う二人の夏は、永遠に続くように想えた。

 

晩夏の夏にね。

2019.02.07 Thursday 04:52 | comments(0) | trackbacks(0) | 
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