希 望
震災から22日目。
悲しみと怒りに満たされた風景。
西日に照らされた荒涼とした大地。風に舞う深海の泥。マスクを濡らす涙。
砂防松の残骸。なぎ倒された故郷。壁に染み付いた水深。
毎日の作業はまるで敗戦処理の如く。理で割り切れぬ想い。絶望の断崖。
運ばれたレンタルベットから、錆と泥が入り混じった海水が流れ出ていた。
これを引き出す作業が如何に困難だったかを、そのまま理解させる残骸。
汚れたその顔に笑顔はない。疲労と諦め。踵を返してまた戦地へ戻る。
目の前で暴水に飲み込まれた同級生。
校庭で繰り広げられた命がけのかけっこ。
「もう海になんか行かない。」恐れるその目の先にある未来とは。
心痛めて想いを受け止める度に流れる不覚の涙。
支援物資を遠慮する声。
自分より大変な人へと笑って手を振る。
支援は届けない。分かってる。ここに置いておく。必要なもの持って行って。
果てしない労働。押し寄せる病んだ人々。
限界を超える機材。枯渇する物資。見送る不甲斐なさと不条理。
機能麻痺と戦う医療機関の戦士たち。
重いポリ缶を持つ腰の曲がった老夫婦。今夜の暖を求めて並んでいる。
寒くないですか。重くないですか。必要なものはあと何ですか。
長時間の列。棘棘した自分の感情を恥じて悔いる。
希望を許されない風景が、延々と横たわっている。
どこまで行っても敗戦処理。疲労と諦めの先にあるものとは何だろう?
「お前がそんなことでどうする。」「諦めているのはその風景のせいか?」
支援や激励とは違った声。・・・ 聞こえた。
今年6月オープンを予定していた新サテライト。止まった計画。
津波に飲み込まれたその場所に、私たちは新しい建物を建設する。
予定は遅れるけれど、今年その地で計画を続行させる。
今、積み重ねるのは決して敗戦処理ではない。未来に向けた希望の建設である。
今一番必要なものは、この地に希望を創ることである。
諦めと悲しみの中で確かな未来を繋げたい。
この地を、私たちのこの地域を敗戦の地にしてはならない。
私たちは希望のために、今を走る。